科学的根拠を基に幸せになる方法を考察してみた。

2021-06-14

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僕らは「幸せになろう」と思って生きています。そして子供にも幸せになって欲しいと願うものです。そんな気持ちから、

「勉強しなさい」「安定した仕事に就きなさい」「自分が幸せだと思う生き方をしなさい」

こういったアドバイスをしたり、または自分も同じようにアドバイスされてきたものです。でも、実際にこのアドバイスで幸せになれるかというと、効果は人それぞれ。つまり当たり外れが大きいんです

僕はもっと万人が幸せになるアドバイスはないだろうかと、調べまくった。結論。

自己実現しなさい」この言葉に行きつきました。

自己実現とは?

自己実現とは、人の基本的な欲求を満たした状態。つまり「おなか減った。」「安全でいたい。」「愛されたい。」「認められたい」といった気持ちを満たし、負の感情に囚われず前を向ける状態。自分の成長に集中できる状態です。

喉が空いて仕方ない。そんな時に勉強なんてできない。腕立てなんて考えたくもない。人助け?先に水を飲ませろ。俺を救え!ってなります。

「自己実現」。この言葉は原液です。色んな要素が詰まった一言に濃縮されたアドバイスです。例えるならカルピスみたいなもの。自分の状態によって薄くできるとても使いやすいものです。

「勉強しなさい」「安定した職業に就きなさい」「自分が幸せだと思う生き方をしなさい」といったアドバイスは、水で原液を薄めたカルピスなんです。

幸せというのは、人の基本的な部分が満たされていて初めて得ることができます。

人の基本的な部分っていうのは色んな要素があります。「健康」「安定」「愛情」「承認」など。「自己実現」とはこれらを全部ひっくるめて満たすアドバイスなんです。

僕らは皆、幸せになる為のアドバイスを貰ってきました。でもそれは局所的なモノ。全体の一部しか指してないんです。だから人によって言う事は違うし、それに従っても人によっては幸せになれない。

さてなぜ「自己実現」なのか。自己実現できるとなぜいいのか?解説していきます。

自己実現が何故幸せにつながるのか?

幸せを実現するために誰もが、国すらも探求をしています。世界各国で幸福度指数というものを作成しそれにより国民が幸せかどうか計算してデータとして測っています。しかし指標となる項目は国によってバラバラ。(蓮沼理佳,2011)

つまり皆、なにが幸せにつながるのか理解していない。

そこで僕は、心理学の分野で盛んに行われている”幸福についての研究”に注目しました。幸福に関係する論文は、1930年頃から学会誌に掲載されるようになりました。つまり約100年に及ぶ研究(エビデンス)の蓄積ができています。(1940~70年の間はほぼ活動休止状態だったが…)

この莫大な数の研究データのおかげで、何が幸福に関する要素なのかが判明してきます。例えばPeterson(2006)*4が複数の論文から幸福感や人生満足感と関連がある要素をまとめてくれています。

低い相関(r=.20以下) 中程度の相関(r=.30前後) 強い相関(r=.50以上)
年齢 友人の数 感謝の気持ちを持つ事
結婚している事 楽観性
教育 信仰をもつこと 雇用されていること
社会階層 余暇活動の質 性的交渉の頻度
収入 身体的健康 ポジティブ感情体験の割合
子供の数 誠実性 自尊心
人種 外向性
知能 神経症的傾向の強さ
身体的魅力 内的統制

ただこの項目を満たしているからと言って幸福ではない人もいる。それはなぜかというと・・・、

人の基本的な部分を満たした状態でないと、幸福につながる要因を満たしても幸福になれないからだ。(2011年度 蓮沼理佳)

さっきも例に出したが、喉が空いて仕方ない。そんな状態では、どんな幸福な出来事も意味をなさない。褒められたって何も感じない。感謝の気持ちを持つなんて無理。仕事が決まった?お金がもらえる?セックスができる?今は水だ。と、どんな幸運も基本的な欲求には勝てない

というわけで、人が幸せになるにはまずは基本的な欲求を満たす事。そのあとに幸福につながる事を身に着けていこう

自己実現する方法

まずは図を見てほしい。

この図は、マズローの自己実現論(欲求階段説)を端的に表したもの。この理論は、人が生まれ持っている基本的な欲求を満たすこと。それにより集中して自分の成長に取り組むことが出来るようになる。といったモノだ。

図のように、人の欲求はピラミッドのようなもの。下から順に欲求が強い。満たされなければ前に進めない。満たされれば 1 つレベルアップすると思ってもらえればOK。

欠乏欲求と呼ばれる欲求は、満たされていないとそればかり求めてしまう。そしてポジティブな感情が少なくなるという報告がある。つまり幸せから遠ざかる。

それとは対照的に、欠乏欲求が満たされた状態。つまり、なにも足を引っ張る欲求がない。成長したいという欲求に駆られる。そんな状態になると人は、ほぼ常にポジティブな感情である事が分かっている。

欠乏欲求が満たされたら成長欲求が出てくる。成長欲求を求める事を、自己実現という。

つまりざっくり言うと、「生理的欲求」、「安全の欲求」、「所属と愛の欲求」、「承認の欲求」を満たしてあげればハッピー。ということになる。

では、どうすれば自己実現できるのか。親が子供にしてあげれる事は何か。といった事はこちらの記事でまとめています。


幸福感を下げる要因を減らす。

ここからは、自己実現した人。もしくは神経症(うつ、全般性不安障害、適応障害、パニック障害)に悩まされている子。著しく幸福感に欠けていけて行動できない人に贈ります。

僕らは、幸せでいるためには様々なトラブルに打ち勝つ事が出来ないとダメだ。いくら欠乏欲求を克服していようと悲しい事や悔しい事、不安な出来事は避けられない。しかし、そういった人生のイベントに飲まれすぎる。すると幸福感は全力疾走で逃げていく。

《不安》《恐怖》《悲しみ》《苦しみ》といった感情に遭遇した時。うけるダメージや回復するスピードは人によって全く違う。つまり性格によって戦闘力(防御力や回復力)が変わってくる。

そこで、負の感情に強くなる。つまりハッピーになりやすい性格になろうというわけだ。

人の性格を表す要素は、5つの単語で表すことができます(Goldberg, L., 1990)。この5種類の要素を「ビック・ファイブ」と呼びます。ビック・ファイブには「外向性」、「協調性(調和性)」、「誠実性(良心性)」、「神経症的傾向(情緒安定性)」、「開放性(知性)」があります。(研究者により言葉のチョイスはちょっと違う)

このなかで「外向性」と「神経症的傾向」は幸福感に大きく影響を与えます。ざっくりまとめると外向性が高いと「人生満足感」、「幸福感」、「ポジティブ感情」が増え「ネガティブ感情」が減る。神経症的傾向が高いとその真逆になります。*10,11

つまり、「外向性」を高め「神経症的傾向」を低下させると幸福になりやすくなる。負の感情と遭遇した時に強いわけだ。

だが基本的にこのビッグ・ファイブは、安定性(変わりにくさ)が高くかなりの割合が遺伝で決まります。でも決して完全なものではなく、成人期になったり年老いても、「調和性」や「勤勉性」は高まるし「神経症傾向」は低くなるという結果が示されるようになっている。(溝上 慎一,2017)

しかし、「外向性」は変化しないか、あるいは落ちていくという結果が出ています。(川本哲也,小塩真司 等,2015)

そこで本当は「外向性」も育んであげたいところなんですが、「神経症的傾向」を減らすことにのみ注目します。「神経症的傾向」ってどんなものか?どうすれば変われるのか?すでにダメージを沢山負って神経症だ。という場合の対応などはこちらの記事で解説しました。


幸福感を上げる要因を増やす。

自己実現をした。つまり基本的な欲求から解放された。そして、嫌な事があってもへこたれない性格を得た。こうなったらあとは幸せを得るだけだ。

ではどうすれば幸せになれるのか。そもそも幸せとは何なのか。

ギリシャの哲学者アリストテレスは、人生を振り返って肯定的に認識できることは重要ではない。快楽や喜びの瞬間が多かった人間が、幸福な人生を送ったと言えるのだと主張している。

プリンストン大学のカーネマン教授も、快楽を感じる事が幸福であり、快楽得た回数が多いほど幸福な人生だという。(大石 繁宏, 小宮 あすか, 2012)

人生満足度の高い人は、幸福に寄与するどのような心理学的特性も高いことが明らかになっている。(蓮沼理佳, 2011)

かの偉人、賢者アリストテレスの英知や、科学的根拠からも、《快楽を感じる事。幸せだと感じる事が幸福にと言える》。もう少し詳しく言うと、ポジティブ感情を増やし、ネガティブ感情を減らす事。これを主観的幸福感(Subject Well Being)という。

幸福な人生を送る方法は、幸福感(SWB)を得る要素を増やす事といえる。非常に単純な話だ。

それには、これまでの数ある研究を調べつくす。そして幸福と関連のある要因をまとめる必要がある。だがこれは非常にラッキーだ。SWBと関連性が高いであろう要素をまとめてくれた論文がある。慶應義塾大学大学院2011年度 蓮沼理佳さんの修士論文だ。これがまたよくできている。

幸福を部分的にではなく総体として捉え、多様な価値基準と幸福との相互の関係性を明らかにすることを目的とした研究で、アンケート調査の為に先行研究をまとめ上げ、360項目の質問を作成している。この質問たちが幸福感(SWB)の要素リストとして役割を果たしてくれた。一覧をここにアップする。(日本人からデータを集めているので文化的差異もないハズ。)

1.自己啓発意識と自己肯定「私には価値がある」「難しい課題も挑戦できる」「自分の信条を持っている」「私の人生は、変化、学習、成長に満ちてる。」といったコンピテンスや自尊心、自律性
2.心のつながりと感謝傾向「感謝することがたくさんある」「人の喜ぶ顔が見たい」「愛情を十分得ている」「私はよく笑う」「私は明日は今日よりもよくなる」、私は常にいまその瞬間を楽しむ」といったユーモア、感謝傾向 、愛情、将来への希望、満喫
3.心の平穏と外向性自己受容、積極的な他者関係、楽観性、心配ごとがない、自己概念の明確傾向
4.自己の確立と社会的立場自己の確立と社会的立場 「私は宗教または思想を持つことによって、精神的に満たされている」「私は、
社会の要請に応えている」「私の人生の目的に深い意義を感じる」「私は自分の人生の意義を理解している」といった人生の意義、自己実現尺度、思想宗教社会の要請
5.気持ちの切り替えが得意「私はいやなことがあってもすぐに気持ちを切り替えるほうである」「気持ちの切り替えが得意 」といった気持ちの切り替えや心配ごとの有無
6.目標の明確性と人生の意義「私がいま行っていることは、将来私が最も叶えたい目標と繋がっている」「私の人生には、はっきりした目的がある」といった人生の意義や目標の明確性
7.社会的比較志向のなさ「私は人生の中で成し遂げたことに関して、しばしば自分自身と他者を比較する」「私は私のすることが他者のすることと比較して、どのようであるかを常に気に留めている」
8.勤労意欲私は働くのが好きだ」「私は、仕事に対して情熱を燃やしている」
9.ユーモア「私は人を笑わせる機会をうかがっている」「私は人を笑わせることが好きだ」
10.親切「私は本当に親切であり、毎日他者の役に立っている」「私は常に日々の生活において、本当に親切であり他者を手助けしている」「私は常に日々の生活において、他者に親切にし手助けしたいと思っている」
11.熟達「私が得ることが出来ようと出来まいと、私が欲しいと思うものは自身の手中にある」

つまり、自分を大切にする。他人も大切にする。人生も大切にする。いまのままで十分幸せだと思える。といった感じだ。これらの特性をかみ砕き、子育てに取り入れれるよう実用的なメソッドとしてまとめてみた。こちらの記事で紹介しているので参考にしてほしい。

まとめ

今回の記事をまとめると、

  1. 自己実現する:人の基本的な欲求を満たす。
  2. 神経症的傾向を改善する:負の感情に囚われに性格へ。
  3. 幸福感を得られる行動を増やそう

この3つになる。順番も1・2・3の順に行うと相当効果があがるはずだ。

僕自身、自己実現に近づいただけで全能感がある。つまり幸福感も、自己効力感も向上した。そして神経症的傾向を改善すると、負の感情によってこの全能感を損なわれる事が減る。また、この全能感があるからこそ心から自分を愛せる、そして人を愛することが出来る。

人生が好転することは間違いない。あたらしい挑戦をしてみようと思えるはずだ。これはきっと病気の快復時の感覚に似ている。

熱・頭痛・咳・嘔吐・倦怠感などに襲われ布団に倒れる。普段以上に深く眠る。爆発的な回復。するとむしろ通常の状態よりも調子がいいくらいに体がメンテナンスされる。

力が溢れ、体を動かしたくて仕方ない。そんな状態を心から味わってください。そしてどうか達成出来たら人生の先輩として「じぶんはこうだった。こんなことをしてみたよ」とコメントでアドバイスを残していってください。

僕も含め、皆の支えになります。

*2 – Hartmann, G. W. (1934).Personality traits associated with variations in happiness. Journal of Abnormal and Social Psychology, 29, 202-212.

*5 – DeNeve,Cooper(1998).The Happy Personality: A Meta-Analysis of 137 Personality Traits and Subjective Well-Being,Psychological Bulletin 124(2):197-229

*8 – Tay, L., & Diener, E. (2011). Needs and subjective well-being around the world. Journal of Personality and Social Psychology, 101(2), 354–365. 

*10 – Steel, Schmidt,Shultz(2008).Refining the Relationship Between Personality and Subjective Well-Being,Psychological Bulletin 134(1):138-61

*11 – Heller,Watson,Hies(2004).The Role of Person Versus Situation in Life Satisfaction: A Critical Examinatio,Psychological Bulletin 130(4):574-600