意志の弱い自分をぶった切れ。人生を切り開く実行機能の鍛え方

2021-06-14

気持ちの切り替え。大人でも難しい事ですよね。子供の何気ない発言でカチンときたり。それが行動に出ようものなら・・・・。子供ならなおさらです。

しかし、それを鍛える方法がある。なんと魅力的な事か。

自分の感情をコントロールし行動を選べる。その能力を実行機能という。これが発達すると「目標のために行動できる」ようになる

また、実行機能は注意欠陥・多動性障害との関連が指摘されている。実行機能の強化はADHDの子が社会で生きやすくなるトレーニングにもなる。Kempton, S., Vance, A., Maruff, P., Luk, E., Costin, J., & Pantelis, C. (1999).

ただ、これは非常に時間がかかる。(自分もいまだにやってる。)一生付き合うべきものだと思う。つまり習慣として日常に取り入れる必要がある。

実行機能は、児童期から思春期にかけて上昇し、初期成人期にピークを迎えた後、しばらくの平坦期(高原期)を経て、中年期に低下し始めるという二次関数(放物線)形の生涯発達パタンをとる。Zelazo, P.D., Craik, F.I., & Booth, L. (2004) 特に、60歳以降の高齢期の減退は急激である。Treitz, F.H., Heyder, K., & Daum, I. (2007) 年を重ねてからのトレーニングも重要だ。

そんな実行機能は「抑制機能」x「シフティング」x「アップデーティング/ワーキングメモリー」という3つの機能の集大成だ。(Miyake et al . 2000)

抑制機能とは、当該状況において優位な行動・思考を抑制する能力。シフティングとは、柔軟な課題切替能力。アップデーティングとは、ワーキングメモリに保持されている情報を監視し、更新する能力。

ワーキングメモリーとは、作業記憶と訳されている。短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。会話や読み書き,計算などの基礎となる,私たちの日常生活や学習を支える重要な能力です。

ワーキングメモリー容量の高い個人は、注意制御・実行機能に優れているというデータがある。Kane, M.J., & Engle, R.W. (2003).Kane, M.J., Bleckley, M.K., Conway, A.R., & Engle, R.W. (2001).

これらは、前頭前野の発達により向上します。幼児期は「ごっこ遊び」など遊びを通して、自分自身に指示を出す(自己制御的内言)を伴う活動を通して実行機能は発達させていきます。

親として積極的に介入して発達を促したい。そう言う場合は、「運動」と「メタ認知」の強化が効果的だ。

「運動」はあらゆる注意や予測、体と感情のコントロールを行う必要がある。ドッヂボールを例に出すと、ボールがどこから来るか、どう動くか、どう投げるか、ルール上OKか。といった判断を絶えず行う。つまり抑制・シフティング・ワーキングメモリをフル活用する。

人は使っていく能力が強化されていく。その為あらゆる能力を駆使して行う「運動」はまさに理想。更に心肺機能や筋力も向上するし良いことだらけだ。こちらは別記事でまとめているので参考にしてほしい。

そしてそもそも、抑制すべき事に気づけない。思考を切り替えるべき場面に気づけない。という状況だと人は何もできない。この自分を客観的に見る。つまり無意識の部分に気づくと言い換えてもいい。無意識の意識化に必要な「メタ認知」の強化はなにより重要だ。

メタ認知とは。

僕はスマホを触ると、つい”面白い情報はないかな”とTwitterをみてしまう。

上記のように”面白い情報ないかな”という刺激を求める自分に気づく事。これがメタ認知。自分の感情や行動をメタ(高次元)視点で理解すること。

アニメなどで「メタ発言」と呼ばれるものがある。これは2次元のアニメキャラが「僕の周りでは殺人事件ばかり起きる。なぜなら作者がミステリー好きだからだ。」など3次元である、僕らの世界の情報を知っていて話しかけてくることだ。これがメタを理解する上で重要だろう。

本来ならアニメキャラが知りえない情報。自分ら状態を客観的に認識している状態。これがメタ認知。つまり自分の置かれた状況や、行動や言動の癖を認識することです。

メタ認知を伸ばすのはとてもお得だ。学習効率・問題解決能力・コミュニケーション能力の向上などが期待できる。教育現場ではメタ認知の向上に血眼になっている。どんな子にも効く方法論を教育者は探求しているとしている。

はっきり述べておこう。メタ認知は誰もが向上させることができる。ただ努力が必要だ。一回一錠。そんな便利なドーピングはどうやら無さそうだ。

メタ認知は2つの成分で出来ている。

1.メタ認知知識

1つ目が知識だ。自分をメタ的に観察する方法を知っているか。これらがなければ認識もできないというわけだ。

何はともあれ、自分の状況に気づけるようになる。自分を客観的に見れるようになる。無意識を意識化する。といった状況を作る必要がある。その為には知識がいるんです。

例えば、今まで何も感じずに歩いていた道のりを、子供と一緒に歩くと「危険な場所っていっぱいあるな」と気づくことができる。一度その視点を手に入れると子供がいなくても「この道は危ないな」と気づけるようになる。

メタ認知っていうのは、これの積み重ねだ。

ただ椅子に座っていても姿勢が悪いとは気づけない。でも正しい姿勢について教わる。見本を見る。整体やyogaやバレエなどを習って骨盤の「前傾・後傾」といった概念を学ぶ。すると椅子に座った際、自分の骨盤の形を認識して姿勢の悪さに気づけるようになる。

つまりメタ認知知識とは、自分の認知を高める知識です。

初心者は視野が狭い。サッカーを例にしよう。始めたばかりだと、相手がどう仕掛けてくるかわからなくてすぐドリブルで躱される。自分がドリブルする際は相手に行動を読まれてボールを盗られる。パスをする際は敵も味方もどう動くか予想できなくて微妙なところに出してしまう。試合中に自分がどこに立てばいいかわからなくてあたふたしてしまう。

しかし経験を積めば積むほど。言い換えるとサッカーの知識と経験、そしてメタ認知知識を増やすほどに視野は広がりあらゆる予測を立てながらプレーすることができる。つまり客観的にみた様子を想像しながらプレーできる。

客観的に認知する。それは物事をうまくやっていくコツ。監督が的確な指示をだせるのは客観的に見ているからだ。

メタ認知的活動

2つ目は行動だ。メタ認知知識を持っていても行動できなければ意味がない

メタ認知的活動には、「モニタリング」、「コントロール」の2つの要素がある(三宮, 2008)。

例えば、「友達に授業内容を解説し、自分の理解が浅い部分も浮き彫りにする。(モニタリング)」、「理解が浅い部分に解決する知識にアンダーラインを引く(コントロール)」「アンダーラインを引いた部分の確認テストを定期的に行う(モニタリング)」といった感じだ。

因みに、この知識自体もメタ認知知識といえる。正直知識が9割。あとは自分を変えたいと思えるか。その思いだ。水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない。飲むという行為。これが出来るかどうかは意志が必要だ。

因みに意志は小さくていい。とりあえず行動に移せるだけの意志があればいい。メタ認知知識を手に入れ改善したいという意志。これがあれば後は習慣にしてしまえばいい。習慣も最初は大変だが続けていくとそれは当たり前になる。

僕のまとめた習慣化の技術を使うと誰でも習慣化できるようになる。

子育てはメタ認知知識の伝授

メタ認知について学ぶほど、子育て=メタ認知知識を教えてあげる事だと思えてくる。

「ブルブル震えるね。手が冷たいね。こういう日を寒いっていうんだよ。寒い時は厚着をして出かけるよ。」

こういった行動が子供に「寒さ」を学習させ、今日の気温に気づけるようになる。

「暴力はダメ。殴られたらとっても痛い。そしてすごく悲しい気持ちになる。怒った時は暴力じゃなくて言葉で伝えて。」

自分が殴りたくなった時。自分は怒ってるんだ。殴ってないけないんだ。こういう場合は言葉で伝えるんだ。と社会性を身に着けるに至る。

子育てをするうえで「ダメ」というだけでは不十分という事が分かってくる。なぜダメだなのか。こういうときはどうすればいいか。これを逐一丁寧に教えていく事が教育なんだ。

メタ認知知識の教え方

言葉は思考に使われる(Vygotsky, 1934)。つまり語彙がなければ思考することすらできない。メタ認知知識は、思考の言語化。これがカギだ。

子供のメタ認知を育てる上で大切なのは、その子の状態を言葉にする。そしてその対処法を教える事。

(出来事)の時、(理由)だから、(対処法)しようね。

この文法さえ覚えておけばいい。使いやすいはずだ。

「思い通りにいかない時は、ムカつくよね。そういう時は、嫌だって言葉で言うんだよ。」
「ムカついた時、物を投げたくなるね。そういう時は、柔らかいクッションをベッドに投げな。」
「うれしい時は、ありがとうって言うんだよ。」
「道を歩くときは、手をつないでね。」

〇〇の時=モニタリング
〇〇しようね=コントロール

もう少し気合いが入ってるときは、「思い通りにいかないね。今その気持ちは怒りっていうんだよ。君はこういう状況になるとムカつくんだね。ムカつくと手を握り締める癖があるね。」と、その子がどういう状況だとそうなりやすいのか。その状態に気づく手がかりを教えて上げる。つまりモニタリングを代弁してあげるといい。

因みに何度もね。

メタ認知向上プログラム

メタ認知知識を地道に教える。これがメタ認知向上の基本だ。だが発展的なプログラムというものがある。この習慣があるとメタ認知が向上しやすいというやつだ。

運動習慣

先ほど、サッカーの例を出したがスポーツは凄いんだ。バランスや、予測、切り替えなどの強烈な脳の繋がりを要求する活動を行うことになります。認知活動は基本的に前頭葉の発達に伴い向上する。

平たく言うと運動は、体も鍛えられるし、頭もよくなる。非常にお得だ。しかも良い監督者・メンバーに恵まれれば自然とメタ認知知識を得られる環境ができる。

内観法

内省とは自己を振り返り,自己を見つめることである(佐藤・落合, 1995)。また,自己内省は,知的好奇心や自己探究心によって自己の経験を多面的に捉え直そうとする傾向とされているもの(中島・服部・丹野, 2015)であり,知的好奇心によって動機づけられた,自己へ注意を向けやすい特性(高野・坂本・丹野, 2012)である。このことから,自己内省は,自分についてより深く知るために,自己のあらゆる側面や経験を見つめ直し,多面的に捉えようとする態度であると考える。

つまりメタ認知の極致と言える。

そんな自己内省を向上させるプログラムがある。それが内観法だ。因みに内観と内省は同じ意味です。内観法とは、母、父、兄弟、自分の身近な人、自分の体などに対して

  1. してもらったこと
  2. して返したこと
  3. 迷惑をかけたこと

これらを連想していく事です。瞑想しながら、ヨガをしながら、日記(SNS、ブログなどでも)をつけながら、会話しながらなどやり方は自由だ。しかしこの習慣があると自分を顧みる力がつく。

驚くほどつく。

おそらく認知を振り返る癖がつくからじゃないかと思う。だから筋肉が動く感覚を感じながら運動したり、日常的に自分の姿勢や人からどう映っているかを意識しながら過ごしたりすることもメタ認知向上に役立つんじゃなかろうかとも思う。

EQ教育

続いて、EQ教育とは、感情の抑制などを鍛えるトレーニングだ。心の知能指数とは、自己や他者の感情を知覚、自分の行動をコントロールする能力を指します。複数の研究で、EQと仕事での成功にも関連があることが示されている。

これもまた、抑制・シフティング・ワーキングメモリをフル活用するものだ。そしてなにより感情のメタ認知知識の伝授。それがEQ教育といえる。

確かな知識・技術を学び正しい接し方、ぶつかり方を学ぶ事で、子供はとても豊かな心をもち、その子自身の幸せはもちろん、周りも幸せにできる人に成長します。そんな子供のEQを育てる上で大切なのはたった一つ。

子供の感情が高まった時。どう接するか。

これにつきます。子供が不安や悲しみ、怒りや悔しさを感じて感情が高まっている時。子供とより親密な関係を築くチャンスであり、心を育てるタイミングでもあります。つまり、子供が怒ったり悲しんでいる時、親の腕の見せどころで、1番必要とされているタイミングです

この感情が高まっている時に以下の対応をしてあげると、子供は自分の感情を客観的に捉えれるようになり自分で対処法出来るようになっていきます。

1つ目は、子供のどんな感情が高まっているのか把握する。
2つめ、子供の感情に共感して、感情を言葉にして認めてあげる。
3つめ、その感情の対処方法を教えてあげる。

この3つです。実際、どんな感じに接するか。例を出すと、

子供を家から出す時や、遊びから帰る時なんかに行きたくないって子供が泣いたり怒ったりする時ありますよね。そんな時に、まだ遊びたくて動きたくないのかなとか眠くて行きたくないのかな、不安や悲しみ、苦しみ、怒りを感じてるのかなってまず予想を立てます。

そして子供の感情を確認していきます。

「いきたくないの?」「どうしてかな?」「眠いの?」「疲れたの?」

尋問にならないように注意してね。落ち着いて子供の感情を聞きだします。そして原因が分かったらまず共感して感情を言葉にしてあげます。

「そっか。それで行きたくないんだね。」「わかるよ。悲しいよね。」「悔しいよね。」「眠いよね。」

こんな感じで、感情を言葉にしてあげます。さらにその感情は当然なんだよ認めてあげます。

「僕も悲しいよ。」「同じ気持ちになるよ。」「その気持ちになるのは当然だよ。」

といった声掛けをしてあげます。そして最後に対処法を教えてあげます。

「家に帰ってからのことを考えてごらん。」「友達やお母さんのこと考えごらん。」「あのキャラクターならこんな時どうするかな?」「あのおもちゃで遊べるね」といった感じで感情が高まった時はどんなことをして対処すればいいのか教えてあげます。

この一連の流れが出来るようになると、子供は自分で感情に気づけるようになり自分で対処出来るようになります。この自分の感情に気付く事をメタ認知といいます。このメタ認知が出来るようにならないと感情のコントロールは非常に難しいです。

そこで、親が手助けをしてあげる事が重要になってきます。しかし親も人間です。性格やその日の体調によって自身の感情に波があるのも事実です。この日は適切に対応出来たけど今日は怒ってしまった。という事は誰にでもあります。

ボクもどれだけ勉強してもムカつく時はムカつくし、怒りたくなります。子供の感情に向き合う事はとっても大変で難しく思いどおりには行かないのでイライラする事も日常茶飯事。とても忍耐力のいる大仕事です。

そこで僕は、怒ってしまいそうな時は、怒りをコントロールするテクニックを活用します。怒りに対処する方法をアンガーマネジメントといいます。このアンガーマネジメントについては別記事にて解説してあるので参考にしてください。

このように子育てには様々なテクニックをフル活用して行うと、格段に楽になります。そして自分の知識が上手く使えたら嬉しくて子育てが楽しくなります。更に子供についての理解が深まり子供との絆が深まります。