子供を適切に導く叱り方

2022-01-28

子供の叱り方が分からないってよくある悩みかと思います。叱り方って非常に気を使うんですよね。僕は割と苦手です。

自分がイライライしてしまえば、ただ怒りをぶつけるだけになってしまうし。。。

それに叱ってもちゃんと聞いてくれないっていう子。多い。まいった。

因みに、最近では「子供の自発性を育む」といって叱らない教育が推奨されていたりします。しかし、自発的に育むことの出来る事と、出来ない事もあります。

例えば、靴を揃える、片付けるといったマナー行動です。子供が靴を脱ぎっぱなしにして家に上がる。おもちゃで遊び散らかしてそのままにする。

あぁ。叱りたい。そう思うことでしょう。

叱るのはその子の不適切な行動を減らしたいから行うわけです。でも叱っても直らない事って多々ありますよね。

(何を言ってもだめ。もう殴りたくなってきた。)

そんな状態は抜け出したいですよね。そこで、どうやって解決してたらいいかを科学的根拠と発達支援の現場で培った体験的スキルを元に解説していきます。

それでは叱る時のコツや、大切なポイントを例を混じえて紹介していきます。

まず、叱られたいと思う子はいません。そりゃそうでしょ。と、思いはするけど怒られたくてやってるようにしか思えない行動をする時ありますよね。

あえて、目を合わせず生意気な口答えをする。唾を飛ばしたり、泡を出したり、暴力を振るったり…。

オラァっ!って追いかけ回したくなりますよね。なぜこんな事をするかと言うと、

注目を集めれる。
物や特権が得られる。
嫌なことから逃げれる。
気持ちいい感覚になれる。

という4つの要因のどれか。もしくはいくつかが組み合わさって不適切な行動のモチベーションになります。

なぜ子供は不適切行動をするのか。

子供はまだ弱いので親の注目を集める事に必死です。この生存本能を注意喚起機能と呼びます。虐待を受けている子が親の事をもっと好きになって気をひこうとするのは、生存本能的に見放されるとヤバいと本能が叫ぶから行うわけです。

そして、物や食べ物が欲しい、特別扱いして欲しいという欲求機能も本能によるものです。おっぱいをくれたり、守ってくれたりして貰えないと生きていけないのでこの欲求も本能的に強く反応します。

嫌なことから逃げる。これは逃避機能といいます。これはもう説明するまでもなく理解できますね。僕もあります。たまに学校や仕事がいやになって「行きたくない!」ってなるもの逃避機能です。

そして最後、感覚刺激機能という欲求があります。ソワソワして動き回ったり、指をしゃぶったりと子供ってなんかしら動き回ってないと気が済まない生き物なのかなって思う時はありますよね。

こういう行動は、刺激的な感覚を得て気持ちよく感じたりスッキリするから行います。大人でも座っていたらソワソワしますよね。そして貧乏ゆすりや、ペン回しをしたり首を回したりするでしょう。あの感覚と似ています。刺激を受けてどんどん学びたいと本能で思う為、刺激が欲しいという欲求が生まれます。

これらの4つの機能から来る行動が、不適切な行動になっているはずです。なので叱る時は、まずその子の欲求を理解して認めて上げましょう。

上手な叱り方

子供がイタズラするのは親の注目を集めたいからかも知れません。その時は、一緒遊びたかったのかな?おいで。でもねイタズラされたら困っちゃうな。次からは一緒に遊ぼって声をかけて欲しいな。と、こんな感じでまず最初にその子の欲求を理解してあげる事(受容)。共感してあげる事。

その後、「そういう時はこうしたらいいよ」っていう代わりになる行動を提案してあげましょう。かなり忍耐力と根気が必要かもしれませんが効果は抜群です。

受容と共感は、子供が「お母さんは、理解してくれる」という、最強の安心を与える為に行います。更に、共感してもらうと人は癒され、落ち着きを取り戻します。

「この人だったら信頼できる」「この人とは心が通い合っている気がする」と感じてもらえるような信頼関係があればこそ、いう事を素直に聞いてくれます。

おもちゃやお菓子が欲しくて駄々をこねる時も、まずはこれが欲しいんだね。でもお家に帰ったら代わりのものがあるよ。と、伝えてあげます。ただまぁ、欲求機能はかなり強力なのでなかなか聞いてくれないかもしれません。

なので「欲しい!」っていう気持ちになった時の、ルールを予め子供と一緒に作るというのが有効です。

一緒にスーパーに行く時は、その前に今日はおやつを買いません。欲しくなってもお家のミカンをたべてね。守れなかったら次からは一緒にスーパーには来ません。みたいなルールを一緒に作りましょう。一方的に決めてはダメですよ。

自分の親や上司を思い浮かべて、一方的にルールを作られたら鬱陶しいでしょう。それと同じなので一緒にルールを作るという作業はとても大切です。そしてスーパーで子供が欲しがりそうな物が置いてる場所が近づいてきたら「ルールはおぼえてる?」というように念押しします。

子供がルールを守れるように手助けしてあげるんです。もちろん鬱陶しい程しないようにしてあげてくださいね。

そして約束を守れたら「ルールを守れたね」って認めてあげてください。このルール決めは、逃避機能からくる行動にも効きます

靴を揃えるのいや。おもちゃ片付けたくない。勉強したくない。ご飯を食べる時、自分の椅子に座りたくない。こういった事の対処も、事前に子供と話し合いましょう。どうやったら守れるかな?って。

因みに、お互いに穏やかな精神状態の時に話し合いをしましょう。そして、直前になったらルールの確認。これを根気強く続けていくとルールを守れる子になるはずです

そして最後の感覚刺激機能からくる行動。これはもう代わりの行動を用意する方がいいです

じっとしていないとダメな時に動きたくなったら腕を揉む。首を回す。といったルール作りをして紛らわすのが有効です。

我慢なんて大人でもめちゃめちゃ辛いですからね。「病院に着いたらお医者さんに呼ばれるまで静かにまっていようね。難しいならこの握るおもちゃをニギニギするといいよ。」といった代わりの感覚刺激を用意してあげると効果的です。

以上の4つの欲求からくる不適切な行動に対する叱り方でした。さて。大半は叱り方っていうよりルール作りみたいな話だったなと感じた方も多かったかと思います。

実は叱るというのはあまりよい効果を産みません。

叱ることの意味

まず叱るというのは本来、不適切な行動を減らす為に行いますよね。専門用語で弱化するといいます。弟と喧嘩する。手を出す。というのは不適切な行動で減らしたいですよね。その場で叱って喧嘩が今後も無くなるようであれば、弱化したといえます。

この弱化を起こす方法には、叱る以外にも、良い行動を増やすという方法で結果、不適切な行動が減るという方法もあります。それが褒めるという行動です。

弟と喧嘩するのは仕方ないとして、手を出すのは良くない事です。でも暴力ではなく話し合いで解決出来るように促してあげたとします。そして上手いこと仲直り出来たら褒めてあげます。

今後も、喧嘩しても手は出さず、話し合いで解決できるようになったとしたら、それは結果として手を出すという不適切な行動が弱化したといえます。因みに良い行動を褒めて増やすことを強化といいます。

躾は、良い行動を増やして不適切な行動を減らす為に行うのでさっきの例でいうと褒めて対処してあげた方が理想的です。しかしまぁ、忍耐力と菩薩の心が必要なことは間違いありません。兄弟喧嘩して暴力も振るいだしたら叱って止めたくもなります。

でもここで叱ると子供にどんな影響があるのかを知っていたらどうにか怒らずに対処しようと頑張れるかもしれません。なので叱る事の副作用について解説していきます。

下手な叱り方の副作用

叱ったり褒めたりして、子供の行動の変化を観察する時、ABC分析という分析方法が非常に役立ちます。このABC分析は非常に単純で、Aに条件Bは行動Cは結果を当てはめるだけで、子供の行動を分析することが出来ます。

さっきの兄弟喧嘩で叱られる例を当てはめてみると、

Aの条件に、弟と喧嘩。
Bの行動は、殴る。
Cの結果には、親に怒られる。

と、なります。これを続けていると何と喧嘩が起きなくなったとします。最高ですね。でも大抵は、親がいない所で喧嘩をしていると思います。これは目が届かないぶん非常に厄介な事になります。

この状況をABC分析に当てはめると、

Aの条件には、親が居る
Bの行動には、喧嘩しない
Cの結果に、怒られない

という要素がはいります。でも、Aの条件に、親がいない。が入るとあら不思議。

Aの条件には、親が居ない
Bの行動には、喧嘩する
Cの結果に、怒られない

Bの行動に、喧嘩するがはいってもCの結果に、怒られないが入るんです。この分析を見て考えると、子供は叱られたことによって、親さえ違えば喧嘩しても問題ないと学んでいるということが分かります。

少し難しい言い回しをすると、条件によって行動を変えてもいいと学んでしまったわけです。この状態を弁別の法則が働いていると言います。

本来なら親がいなくても、悪い行動はしないでいて欲しいものです。でも怒って押さえつけることは、怒る人がいなければ問題無いと思わせてしまうことになります。

さらに、最初は叱られる事がイヤだったはずなんですが次第に親の事がイヤになってきます。これを派生の法則といいます。この派生の法則はかなり分かりやすいかと思います。

理科が好きな子でも、理科の先生が嫌いだったら次第に理科というモノ自体が嫌いになってくる。
あるいは、大好きなタレントさんがオススメしている物は気になってくる。そして好きになる。というのも派生の法則。です。

叱る事で起きるデメリットはまだまだあります。反発の法則というものがあります。怒られると反抗したくなるってやつです。

凄く従順な犬でも急に攻撃すると、反射的に吠えたり威嚇したりします。これは本能的に生体防御としての機能なのかも知れません。

まだまだ副作用はあります。人はストレスからの防御法として認知的不協和という技を持っています。例えば弟を撫でようとした時に、運悪く殴っちゃダメ!と言われたとします。

撫でようとしたのに怒られたという状況はストレスが大きすぎるので、弟を撫でようとなんてしてない。と思い込みます。そして今後も、どうせ弟を撫でたって喧嘩してると勘違いされると思い込んでしまいます。

この認知的不協和は非常に厄介です。怒る時だけでなく褒める時にも悪影響を及ぼします。

好きで絵を書いてる時に上手だねって褒めてあげます。最初は嬉しくて、それからも一生懸命絵を描きます。どんどん上手になって褒められようと頑張ります。この辺りから矛盾が起きてきます。

自分は好きで絵を書いてたはずです。でも今は褒められる為に書いてるのです。この矛盾のストレスからどう身を守ると思いますか?最悪のパターンがこれです。

ただ好きだから描いているんだ。褒められる為に書いてるんじゃないと怒りが湧いたりします。そして、褒められるとヤル気を無くし次第に絵を描くことが好きでなくなる。これが認知的不協和の恐ろしさです。

他には、怒られるという事は、自分のやる事を認められてないということ。自己効力感が損なわれます。自己効力感が育まれないと自分を信じることが出来ず、何事も消極的になってしまいます。
新しい事挑戦をせず、やる気もない。そんな子にはなって欲しくないものです。

まとめると、叱ることで起こるデメリットとしては叱ってくる人を嫌いになったり、その人がいないとルールを破ってしまうようになったり、やる気や根気、自己効力感が失われたりと残念な事が起きてしまいます。

ついつい叱ってしまうという人は、なぜ叱ってはダメなのか。を知っていると対処しやすくなるかもしれません。

叱らない教育。

不適切行動を叱って減らすのではなく、良い事を褒めて伸ばし、結果的に不適切行動が減る。という教育。これはなかなか有効です。

例えば、兄弟喧嘩を減らしたい時。喧嘩することを叱るのではなく、兄弟が仲良くしている事を褒めて伸ばす。すると、兄弟が仲良くしていれば、喧嘩は減る。

こういった狙いを定めた『褒め』を使いこなせると、叱らずとも済みます。怒る事も褒める事も技術の一つ。必要な時に、必要な分、適切に使えばいいわけです。

適切に褒める事で、必要な時に叱ると効果も上がります。いつも褒めてくれるのに、これは怒られた。本当にしてはいけないことなんだ、と理解できます。