心理学で明らかになった幸せになる習慣

2021-06-14

ギリシャの哲学者アリストテレスは、人生を振り返って肯定的に認識できることは重要ではない。快楽や喜びの瞬間が多かった人間が、幸福な人生を送ったと言えるのだと主張している。

プリンストン大学のカーネマン教授も、快楽を感じる事が幸福であり、快楽得た回数が多いほど幸福な人生だという。(大石 繁宏, 小宮 あすか, 2012)

人生満足度の高い人は、幸福に寄与するどのような心理学的特性も高いことが明らかになっている。(蓮沼理佳, 2011)

かの偉人、賢者アリストテレスの英知や、科学的根拠からも、《快楽を感じる事。幸せだと感じる事が幸福にと言える》。もう少し詳しく言うと、ポジティブ感情を増やし、ネガティブ感情を減らす事。これを主観的幸福感(Subject Well Being)という。

幸福な人生を送る方法は、幸福感(SWB)を得る要素を増やす事といえる。非常に単純な話だ。

そこで今回は、幸福につながる心理学的特性を一気に実行したらいいんじゃない?という安易な発想に基づいた習慣を紹介します。

自分でも結構納得できる内容になったし、実際にやってみると自己効力感がめちゃくちゃ増す。

というわけでひとまずどんな心理学的特性があるのか知らなければ話は進まないので一覧をここにアップする。(日本人からデータを集めているので文化的差異もないハズ。)

1.自己啓発意識と自己肯定「私には価値がある」「難しい課題も挑戦できる」「自分の信条を持っている」「私の人生は、変化、学習、成長に満ちてる。」といったコンピテンスや自尊心、自律性
2.心のつながりと感謝傾向「感謝することがたくさんある」「人の喜ぶ顔が見たい」「愛情を十分得ている」「私はよく笑う」「私は明日は今日よりもよくなる」、私は常にいまその瞬間を楽しむ」といったユーモア、感謝傾向 、愛情、将来への希望、満喫
3.心の平穏と外向性自己受容、積極的な他者関係、楽観性、心配ごとがない、自己概念の明確傾向
4.自己の確立と社会的立場自己の確立と社会的立場 「私は宗教または思想を持つことによって、精神的に満たされている」「私は、
社会の要請に応えている」「私の人生の目的に深い意義を感じる」「私は自分の人生の意義を理解している」といった人生の意義、自己実現尺度、思想宗教社会の要請
5.気持ちの切り替えが得意「私はいやなことがあってもすぐに気持ちを切り替えるほうである」「気持ちの切り替えが得意 」といった気持ちの切り替えや心配ごとの有無
6.目標の明確性と人生の意義「私がいま行っていることは、将来私が最も叶えたい目標と繋がっている」「私の人生には、はっきりした目的がある」といった人生の意義や目標の明確性
7.社会的比較志向のなさ「私は人生の中で成し遂げたことに関して、しばしば自分自身と他者を比較する」「私は私のすることが他者のすることと比較して、どのようであるかを常に気に留めている」
8.勤労意欲私は働くのが好きだ」「私は、仕事に対して情熱を燃やしている」
9.ユーモア「私は人を笑わせる機会をうかがっている」「私は人を笑わせることが好きだ」
10.親切「私は本当に親切であり、毎日他者の役に立っている」「私は常に日々の生活において、本当に親切であり他者を手助けしている」「私は常に日々の生活において、他者に親切にし手助けしたいと思っている」
11.熟達「私が得ることが出来ようと出来まいと、私が欲しいと思うものは自身の手中にある」
(蓮沼, 2011, pp.88-89)

上記の表は細かく分類されたもの。しかしまぁ数がありすぎるとどうしても辛く感じます。僕はとてもそう感じる。それによくよく見ると重なり合う部分も多い。そこで個人的解釈でまとめ直す。

1.自分を大切に。「私の人生には目的が在る」「いま行っている事が、将来叶えたい目標と繋がっている」「自分は価値がある」「難しい課題も挑戦できる」「心配事も少ない」「なにかあっても気持ちの切り替えが早い」、「私は常にいまその瞬間を楽しむ」
2.愛し愛される「周りから愛情を十分貰っている」「日々感謝し、周りの人を愛している」「自分は、毎日だれかの役に立っている」

どうだろう。自分を大切にする。他人に大切にされる。他人も大切にする。そんな内容になった。驚きのスッキリ感。我ながら天晴。とても理解しやすい。(細かいものは除きました。)

やる気が削がれるほどの膨大な数の研究データを咀嚼し続けるとこうなる。いやはや驚いた。幸せになるためにどうすればいいかを考察した結論は「自分を確立する。確立した自分を愛してもらう。自分も他人を愛する。」これだけです。

それに意外と普通の事のように感じますね。ただまぁ、この当たり前を意識することがそもそも無いものです。これはいい機会です。人生に関わりの深いものにこそ時間やお金をかけるべきという考えで言うととても理にかなっています。

例えば一日8時間ほど人は眠ります。つまり1日の3分の一。人生の三分の一は睡眠に費やしています。その為、ベッドや枕にお金をかけるのはコストパフォーマンスに優れていると言えます。

では、自分の確立を。周りの人に愛し愛される事は人生の何割に影響することでしょうか?

僕は「10割でしょ」と思うので本気で調べ尽くしました。それだけの価値があると思ったからです。その結果、この当たり前である「自分を大切にする。他人に大切にされる。他人も大切にする。」を本気でやり遂げるのは割と大変であることも知りました。

かなり詳細にまとめたので、やれるとこまで高みを目指してみてください。ただまぁこれもまた数があるので、最後には僕が実際の日常に組み込む際はこうしたという例も出してます。参考にしてみてください。

自分を大切にするには、自分を使いこなせる必要がある。

1.自分は何者なのか知らねば始まらぬ=アイデンティティの明確化

自分を大切にする。というってもまず自分というモノがない事には始まらない。「自分は何者だ」と答える事が出来なければ「自分の行動を選ぶことすらできない。」

自分を確立するとは、アイデンティティを明確にすること。そしてアイデンティティを持つというのは、自分が「何者だから」いう意識をもって行動を選べる状態です。

どういう事かというと、とても怖そうな人が子供を襲おうとしていた時でも「親だから」、「大人だから」、「警察だから」、「ヒーローだから」助けに行く。といったように自分は何者であるかを認識してその上で行動できるという事です。

僕は、「子供の発達に携わる人」というアイデンティティを持っているから子供の事をよく知りたい、勉強しようと思うわけです。

そしてこのアイデンティティは時と場合によって使い分けます。高校の同窓会なんかにいくと「元OO高校の生徒」というアイデンティティを持って話したり行動します。

アイデンティティは、持っているだけ沢山の場面で適応できる自分が増えていきます。その為、習得する術を持つとそれだけ適応力の高い人になれます。

だからアイデンティティの確立は幼いころから習慣づけてやることがおススメです。

しかし今の時代、「男の子だから」とか「日本男児たるもの」という教育は不適切なものとして扱われています。アイデンティティの確立という観点からみると悪いものではないんですが、押し付ける事が「悪」なんですよね。

そこで、どうやって子供のアイデンティティを確立させてやるといいのかをという解説をまとめましたので参考にしてください。

2.自分は出来るヤツだ=自己効力感の向上

自分は「こういう人だ」と言えるようになる。こうすることで自分の目標が出来、将来に向けて自分を磨く土台が初めて出来たといえる。そして、「自分には価値があり、難しい課題も挑戦できる」という精神状態になることで更なる自己成長につながる。

つまり自尊心、自律性を持ちコンピテンス(能力)を磨くという事だ。

このコンピタンスや自尊心、自律性というのは「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」と呼ばれる非認知能力と大きく関わりがある。(西村,河村, 2007)

自己効力感とは、心理学者のバンデューラが唱えた動機づけの説明をするための概念です。「自分はどんな事も上手にできる」という風に自分の可能性を認知していることをいいます。自己効力感が高まることで自然と自尊心も育ち、自律し、コンピタンスを磨けるようになる。

そんな自己効力感を伸ばす為には「成功体験」「代理体験(同じような能力の人間が努力し成功しているのを見る)」、 「言語的説得(励まされる」)、「生理的状態(心身の状態が良好なこと)」の4つが重要だといいます。

下記の記事にまとめたので是非習慣に取り入れてください。

3.気持ちの切り替えなら任せろ=実行機能の向上

気持ちの切り替え。大人でも難しい事ですよね。子供の何気ない発言でカチンときたり。それが行動に出ようものなら・・・・。子供ならなおさらです。

しかし、それを鍛える方法がある。なんと魅力的な事か。

自分の感情をコントロールし行動を選べる。その能力を実行機能という。これが発達すると「目標のために行動できる」ようになる。つまりアイデンティティの強化につながる。あと自己効力感も。

また、実行機能は注意欠陥・多動性障害との関連が指摘されている。実行機能の強化はADHDの子が社会で生きやすくなるトレーニングにもなる。Kempton, S., Vance, A., Maruff, P., Luk, E., Costin, J., & Pantelis, C. (1999).

ただ、これは非常に時間がかかる。(自分もいまだにやってる。)一生付き合うべきものだと思う。つまり習慣として日常に取り入れる必要がある。

4.今を楽しむ=マインドフルネス(フロー)

今を楽しむ。というのは究極に自分を使い切る行為です。

心の底から一つに熱中する。自分も。感情も。何もかも忘れて一つの事に集中する。まるで自分が無くなるかのように。この状態をフローと言います。

心理学者のミハイ・チクセントミハイはフロー理論の中で、「フローの状態に入った当事者は、時間の感覚を忘れ、自分の存在も忘れ、ただ何者かに導かれるように優れたアウトプットを生み出していく。フローになっている状態があればあるほど、幸せである」と言っています。

フロー状態になるには以下の要素がいくつか当てはまるとOK。

  1.  目標の明確さ(何をすべきか、どうやってすべきか理解している)
  2.  どれくらいうまくいっているかを知ること(ただちにフィードバックが得られる)
  3.  挑戦と能力の釣り合いを保つこと(活動が易しすぎず、難しすぎない)
  4.  行為と意識の融合(自分はもっと大きな何かの一部であると感じる)
  5.  注意の散漫を避ける(活動に深く集中し探求する機会を持つ)
  6.  自己、時間、周囲の状況を忘れること(日頃の現実から離れたような、忘我を感じている)
  7.  自己目的的な経験としての創造性(活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない)

アイデンティティの強化、自己効力感を高めた状態ならいくつかすでに満たせているはずだ。そこで、ここまで実践してきた人たちにとって大事なのは、「フィードバックを得ること」だ。

フィードバックがすぐにある。これの中毒性はすさまじい。ゲームなどがいい例だ。RPGなら敵を倒せば経験値が貰える。ある程度たまるとレベルが上がる。ステータスも数字で見れて、上昇していく。

なんたる快感・・・。親がしつこく注意してもやめたくないくらいにハマる。

このフォードバックを得るには、周りや環境、システムに頼るか、自分で作り出す事もできる。ここでは自分で自分にフィードバックできる人を目指す。

まず、自分で自分にフィードバックする。それは、自分で自分を評価できる状態になることだ。

算数の勉強した。足し算ができるようになった。ひとつ賢くなった。昨日できなかったことができるようになった。と気が付けるといった状態。

これには、「メタ認知」x「自己観察の習慣」がものをいう。

自己観察とは、自分自身の精神状態やその動きを観察して、心理上の知識を得ること。内観。内省。〔現代日用新語辞典(1920)です。

「今の自分は退屈している」、「暇だ」、「足がかゆい」といった自分の思考と感情に注目することです。これはブッダが悟りを開くために行った事と同じです

瞑想し集中力を極限まで高め、自分を見つめ続けた結果「いかなる現象も作りものだ」と確信し人生の苦しみが消えうせる。つまりフローに入り人生の苦しみを忘れるほど今この瞬間に集中したということ。

ブッダの教えが正しい事を科学的に証明してしまいましたね。

子供は基本的にほっといても今を生きてますからマインドフルネスしてます。ただ、選んで行えるわけではないので習慣づけれるなら行ったほうがいいのも事実。

自己観察の習慣を身に着けるのは、なかなか大変だ。人は「ジッとしておくこと。自分の考えに注目すること。」をとてもシンドイ事だと感じるから。しかも最初は「意味あるのかこれ」と感じてしまうし。

割と難しいので、親がやってる姿を見せる。運が良くマネれば万々歳とおもってやっていこう。おススメなのは日記やヨガなどの体や感情の隅々を意識する行動です。

愛し愛されるには。

誰かを愛し、誰かに愛されるには技術が必要だ。

僕らは、マナーや思いやり、道徳といったもので感謝傾向を教育していく。

感謝の出現について、McAdams & Bauer(2004)は、愛着の経験は感謝の基本的な要素を含んで
はいるが、感謝の経験として成立するためにはまだ十分ではないと述べる。

つまり、愛着は基礎となる。そしてその基礎があったうえで児童期に、養育者や大人とのやり取りの中で、恩恵を受けた場面で「ありがとうは?」、「お礼を言いなさい」と伝えられることで感謝の経験と社会的規範を学習し獲得する。

Hussong, Langley, Coffman,Halberstadt, & Costanzo(2019)は、親子の話し合いやしつけに加えて、親がモデルになることで子の感謝が社会化していくことを論じている。「お手伝いしてくれてありがとう」というように親から子へ日常的に伝えられる感謝のコミュニケーションが、模倣の対象として感謝の発達に影響することも考えられる。

つまり教育だ。

しかし、内藤(2004)は“子どもや青年にとって、感謝の背後にある他者に依存しているという感覚と自律という感覚をどのように自分の中で統合するかが求められる”と指摘する(p.1177)。このような他者に依存しているという感覚と自立という感覚の葛藤を感謝は伴うことから、心理的自立を模索する青年期には感謝への抵抗が生じる場合もあると考えられる。(池田幸恭,2020)

ざっくりまとめると、無条件に愛され、感謝する場面を教えられると感謝できる。ただ対等な立場にいないとダメだ。

つまり「アタッチメント」x「マナー教育(SST)」x「ヨコの関係」だ。

まずは愛されることによって、愛することを学ぶ。

アタッチメントとは、人が生まれすぐに親と結ぶ絆。人生の最初に学ぶコミュニケーション。そして世界を見るためのレンズともいえるし、行動のモデルともいえるし、生きていくための基礎といえる。

詳しくは別記事にて解説しているので参考にしてほしい。

マナー教育(SST)はコミュニケーション能力を向上させる。

どれだけ素晴らしい人間でも、「自分はこんな人間だ」と伝える手段を持たないとダメだ。誰にも理解はされない。

最高スペックのPCを、北海道の駄菓子屋の隅で売っていても誰も気づかない。しかもそのPCを、高知の水族館で宣伝しても誰も買いには来ない。

どうですか。訳の分からない例えでしょう?でも実際にコミュニケーションでこれに近い事をしている人がいます。誰も興味のないマニアックな話を、永遠としてしまうとかね。

しかし、コミュニケーションは技術の塊です。一つ一つ丁寧に抑えていけば誰でも上手になれます。

あと個人的に注目しているものがある。それが内観療法

内観療法は、本来修養法として開発された吉本伊信の内観法を医療、臨床心理的目的のために応用する心理療法(精神療法)のこと国際的な評価も得られており2003年には国際内観療法学会も設立され現在に至っている。(Wikipedia)

ざっくり説明すると「お世話になったこと」、「して返したこと」、「迷惑を掛けたこと」この3つを思い出していく。すると感謝の心が芽生える。精神的に穏やかになる。対人緊張が取れ、コミュニケーションがスムーズになる

上下ではなく、ヨコの関係を築く

《ヨコの関係》とは、アドラー心理学の考え方です。

タテの関係とは、先輩・後輩。上司と部下といった上下の関係。ヨコの関係は、友達や夫婦同氏といった対等な関係です。

親と子供は《ヨコの関係》が望ましい場合もある。つまり、大人と子どもは平等で対等ということです。

でも、どうあがいても親と子は同等ではないです。大人は体も大きい。力も強い。経済力もある。そして経験も豊富。

それに比べて子どもは小さい。力も弱い。経済力もないし。経験も不十分。

その為、どうしても上下関係ができやすい。四六時中、立場が上の人がいればたまったもんではない。って話です。特に幸福感を向上させたいのであれば、思春期以降は特にヨコの関係を意識するべきでしょう。

親が命令を下す。それは、他者に依存や支配されているという感覚につながる。

理想的なのは、尊敬できる友達のような先輩からアドバイスするようにふるまう事です。