失敗しても立ち直るレジリエンスを鍛える方法

2021-06-14

生きていく。それは困難の連続です。身近なものでは「朝起きる。」「学校に行く。」「人と円滑なコミュニケーションをとる。」「勉強をする。」

深刻なモノでは「いじめ」、「虐待」、「失恋」、「離婚」、「死別」など...。

避けられない事。解決が困難な事。それがストレスとなり、心の傷になります。

しかしこれらを経験した人がみんなダメージを受けたままいるわけではありません。人には困難を乗り越え傷をいやす力があります。それがレジリエンス(resilience)

レジリエンスとは、多くの研究者が様々な定義を唱えています。まとめてみると「苦しい体験をしても、それに柔軟に対応し、生き抜く力」というものになります。

レジリエンスが向上すると、ストレスを糧に人間として成長できるようになります。また、適応能力が高くなり柔軟な思考が身につくため、人間関係もスムーズになります。

僕は、自分がやりたいこと・夢をかなえる事・自分の考えを貫く事などはレジリエンスを鍛えていたからできたことだと思う。僕自身は「仕事に時間を捉われず、自由でいたい」と思っていた。その為「就職せず自分でビジネス起こす」と考えていました。

だから、親との衝突があった。それに周りの人らは皆、将来就職するのが当たり前だと考えていた。なかなか強力な同調圧力があった。そして現在はSNSやブログなどで情報発信、そして僕の事もオープンに話している。これもまた周りの目が厳しいものがあったり、SNS上でも批判があったりする。

全ての事は、多少なりとも心に傷を負うモノだ。でもかすり傷だと思える。致命傷にはなりえない。たとえケガしてもすぐ直るとわかっている。だから挑み続けることができる。

このレジリエンスは、誰もが身につけられるものです。しかしレジリエンスを支える要因は数が多い。小花和 (2004) のレビューを中心に,国内外の先行研究によって示されたさまざまなレジリエンス要因をまとめるとこうだ。

ソーシャルスキルコンピテンス自己統制チャレンジ気質肯定的な未来志向その他
共感性問題解決能力自律・自己制御興味関心の多様性抵抗力楽観性身体的健康
社会的外向性洞察力感情調整努力志向忍耐力自立
自己開示知的スキル・学業成績道徳心・信仰心
ユーモア自己効力感・有能感自己分析・自己理解

さすがに多すぎてやる気が削がれるだろう。それに、レジリエンス要因の中には後天的に身につけやすいものと,そうでないものがある。(平野真理,2010)

そこで親子で高めあう事が出来るものとして3つの項目に絞ってみた。

コンピテンス(心)ソーシャルスキル(技)自己確立(体)
問題解決能力(実行機能)共感性(傾聴)健康
自己効力感自己開示(アサーション)アイデンティティの認知・形成
学習量向上成長マインドの形成

なんとなく「心・技・体」にまとめれた・・・気がする。心理的要因としてコンピテンス。社会的要因としてソーシャルスキル。身体的要因として自己確立。という分別を行ってみた。(一部どちらともとれる要素はあるが)

もちろんこれらすべてをやる必要はない。出来る事。やれそうなこと。必要なモノだけに絞って実践していくといいんじゃなかろうか。

各項目ごとに詳細に解説した記事を紹介する。ただ、記事をたどるのは根治療法だ。風邪を治すために「体力をつけましょう」と長時間かけて体を鍛えることに近い。気合が入りまくったものだ。

風邪ひいたんでちょっと解熱剤を。頭痛薬を。トローチを。そういう対症療法でいい場合もあるだろう。そこで記事の最後に即効性の高い方法をまとめた。風邪薬的なやつだ。自分と子供の気合によって使い分けてほしい。

コンピテンス(心)

コンピテンスは有能さという意味の心理学用語だ。心に傷を負う。かすり傷だろうが致命傷だろうが程度に関係なく「傷=自分はダメな奴」という気持ちになるものだ。つまり自信喪失。

そんな時は、自分の心を理解する。向き合い方を身につける。自分の主導権を握る。そんな行動(自我弾力性)が心の傷を覆うカサブタになる。

問題解決能力(実行機能)

自分の感情をコントロールし行動を選べる。その能力を実行機能という。これが発達すると気持ちの切り替えがスムーズになる。

気持ちの切り替え。割といい歳の僕でもいまだに難しい事です。子供の何気ない発言でカチンときたり。それが行動に出ようものなら・・・・。

子供ならなおさらです。そんな実行機能はレジリエンスには欠かせない要素です。

自己効力感

自信喪失。これも程度の大きさによって「このやり方でいいんだろうか?」という疑問程度から「死にたい」「自分は無価値だ」「何をやっても無駄」というレベルまである。

レベルが高いほど、時間はかかる。でも「自分はできるやつだ」と思える日が必ず来る。そうなってしまえば過去の自信喪失は糧になる。あの経験があったから今の自分があったと思える。

そんなお手伝いをしたいものだ。

学習量向上

知識は心を支えてくれる。無知は恐怖の源泉だから。

僕は昔子供が嫌いでした。なぜなら子供にどう対応していいかわからないから。なんでこんなに意味不明なのか。そう思っていたから。

しかも、学習できる。すると周りは褒めてくれる。認めてくれる。あたらしいコミュニティに参加できる(受験合格など)。

知識は自分を運んでくれる。はるかな高みへと。足場みたいなものだ。高い所に上ると色んな選択肢が見えてくる。それに頭の悪いやつがついてこれなくなる。つまり低レベルの人間から身を守れる。

鎧となり、羽となり、目となり、手足となる。学習は自分を守り、育て、癒してくれる。

ソーシャルスキル(技)

味方してくれる人。環境。それらがレジリエンスには重要だ。

話を聞いてもらえるだけで、人は癒される。認めてもらうだけで、人は解放される。触れてもらうだけで、人は愛を得られる。

それらを得る事が出来る環境づくり。つまり人間関係を築いておくことは重要だ。そこでソーシャルスキルはあったほうがいい。(必要最低あればいい)

ソーシャルスキルの根本は、「この場面はこうしたほうがいい」という経験の積み重ねだ(チューニング)。しかしそれもまた、親・友達といった周りの人との関係でしか得ることができない。

だからそれを得るための下準備。つまり人間関係を作るうえでの土台となる技術を2つ紹介する。

1.共感性(傾聴)

人は話すことが快感の生き物です。そして全力で話を聴いてもらうととんでもない快感を得ることができます。なんとセックス並みのドーパミンが出ます。

しかし僕ら"聞く"は日常的におこなっているが、"聴く"は、やっていない。

「いや聞いてるよ!」と思うかもしれない。テレビや親の小言、友達のバカ話、つまらない授業、ゲームの音、車の通る音。

でも本当にこれらに全力で耳を傾ける事ありますか?

友達の話を聴いていても「私はこう思った!」「それってこういう事でしょ?」と、なんやかんや口をはさんでしまうモノです。つまり自分も話したくなってしまうモノです。

正直、技術を学び訓練を積んだ人でも気合を入れて1時間真剣に"聴く"というのはとても疲れる。日常生活で行うのは億劫なほどに。

でもそれを少しでも取り入れましょう。

2.自己開示

自己開示は、良好な人間関係を築くうえで欠かせません。

初対面の人や、知り合って間もない人を前にすると、相手の性格や考えがわからないため、どうしても警戒心を抱いてしまいますよね。味も材料もわからない異国の料理を前に、食べるのを少しためらってしまうような心理です。

けれど、「この料理は、芋と薬草を香辛料でいためたものですよ」説明されれば、料理について理解でき、不信感が大きく軽減されますよね。自己開示には、自分がどんな人間かを相手に説明することで、警戒心を和らげる効果があるのです。

初対面の人と話すときなどは、できるだけ良い印象をもたれようと、自分の本来の姿を隠し、当たり障りのない表面的な会話に終始してしまう人は多いのではないのでしょうか。たしかに、「手の内」を見せなければ、無難に会話が進むかもしれません。けれど、親しくなるまでの時間はそのぶん長くなってしまいます。相手との関係性を前進させたいのであれば、「自分はこういう人間ですよ」と早めに積極的な自己開示を行なうのが有効なのです。

それは、自分の意見をちゃんと伝えることが出来るかということ。もちろん相手を傷つけずに、だ。これはアサーションと呼ばれるコミュニケーションテクニックで習得できる。

自己確立(体)

自分というモノがなければ、レジリエンスどころかまともに生きることもままならない。

人は、まず《体》ができる。その体に、愛情が注がれ《心》が生まれる。その心を土台に、人生を歩んでいく。経験を積んでいく。荒波にもまれ形が整い《自己》が出来ていく。

子育てにおいて『体』の目指すべきは『健康(Wellness)』だ。思い通り動く体があってこそ全力で楽しみ、苦しみ、悲しみ、喜びを味わえる。詳しい仮説は別記事にまとめているので参考にしてほしい。

心理学において『心』といった曖昧な概念は《反応》という観測可能なモノに言い換えます。

「泣いたら抱っこして声掛けしてもらえる」
「話しを聞いて貰える」
「共感してもらえる」

こういった経験が「愛される」という行為なのだと学ぶ。つまり《愛》という反応を学んだといえます。そして学んだ反応を使って、《相手の話を聞く。相手と共感する。》という行動を行う。こうした行動を観測できること。これが人の成長です。つまり人を育てるというのは、行動パターンを教えてあげる事と言えます。

生まれてから1番最初に学ぶ行動パターンをワーキング・モデルといいます。このワーキング・モデルは特別です。今後一生このワーキング・モデルを土台にして様々な経験から自分をアップデートしていくんです。

この重要な最初の仕事は親です。親の反応を真似て作っていくんです。これを『愛着』と呼びます。心とは『愛着』の事を言います。最高の親としての姿を見せてあげたいものです。

そして、この愛着を土台として、色んな人と出会い、マネをして、学んでいく。何度も繰り返し、いつしか自分が出来ていきます。これを『自己(アイデンティティ)』の確立と言います。

「健康」。「愛着」。「自己」。つまり最強の体。至高の心。最高の学び。これが人生を生きぬく武器となる。この3つに全力を注ぐこと。それが子と共にいる者の使命。義務だ。

凄くシンプルに言い換えると、いいものを食べさせ、よく遊ばせ、よく眠らせる。たくさん愛情を注ぎ、人としての見本を見せる。理想との出会いを増やす学ばせる。といった感じ。

アイデンティティはこちらを参考にしてください。

成長マインドの形成

自分が成長するのが1番の楽しみ、成功は自分の努力の結果だと考える思考パターンを成長マインドセットといいます。この成長マインドセットが出来ると困難な課題にも粘り強く取り組めるやり抜く力や失敗しても立ち直る力といった非認知能力が育まれます。

成長マインドの伸ばし方は、努力や計画、行動の成果やプロセスを一緒に喜ぶこと。共感してあげることです。

家庭で子どものレジリエンスを高める方法

ここからはレジリエンスを高める方法のまとめを兼ねた、即効薬を出していきます。根本的な改善は上記の記事を辿ってくださいね。

現時点で心に傷を負っている。という場合につかえる具体的なアプローチをいくつか紹介します

親に余裕があること。

よく眠り、よく食べて、適度に体を動かす。そして精神的に余裕があること。そうすることで子供と余裕をもって接することができる話を聞いてあげることができます。

子供の話を聞く。すごくよく聞く

人は話すことが快感なんです。話すのが苦手という子でも、話せる環境であればよく話します。親はただひたすら。全力で話を聞く。それだけに徹しましょう。

本気で聞くだけっていうのはすごく難しいです。「それはこうしたほうがいい。」「私はこうおもうな」「それはダメだね」とかなんか口を出したくなります。でもただ聞くだけ。「そうなんだね」を30分も続けるのはとんでもなく大変ですがやるだけの価値があるものです。

規則正しい生活習慣

「決まった時間に寝起きする。」「栄養・食物繊維豊富な食事を摂る」「排便がスムーズ」「運動習慣がある(簡単なストレッチ、散歩でいい)」「自然に触れる(日光、大地、青空、川、海、木など)」

この6つが出来れば最高。安定は心と体にも安定をもたらします。

具体的にプロセスを褒める。

褒める。それはご褒美。癒しでもあります。認めてくれたと感じることが自己効力感に繋がります。

例えば、お絵かきをしいていたのなら、「たくさんの色を使って楽しいね」とか「このグルグルが力強く描けてるね」と具体的にほめてあげましょう。

ただ、「頭が良いね」とか「最高の作品だね」といったように結果を褒めるのはNG。大抵は、自分の能力が至らないと感じるせいで、自己効力感の低下が起こります。

うまくできない日もある。

結果を褒めるのは、時に子供を追い詰める結果を導きます。

注意するときは「○○しよう」と言い換える。

「走っちゃダメ」。この言葉は相手を否定します。結構攻撃力高めの言葉です。こういった言葉を浴びせられ続けると自己効力感は低下します。もしくは、反発したり聞き流したりするようになります。

つまり防護力の低下。攻撃力・回避力が向上。という感じです。防御力はレジリエンスの低下。攻撃性や逃避癖は人生の質を低下させる恐れがあります。

そこで、声掛けは「私は、一緒に歩いてほしい」、「歩いたほうが周りも見えるし安全だよ」という伝え方をします。頭ごなしにダメと伝えるのではなく、自分の思いを伝えること。そうすれば、子どもは素直に自分の行動をふりかえることができます。

子どもにお手伝いをしてもらう

自分は人の役に立っている。そう感じることは自己効力感を高めます。

小さくても、出来るお手伝いはあります!ポストから新聞ととってくる、机にお箸を並べる、花の水やり、洗濯物をたたむ、etc...

年齢が上がれば、カレーを作るから材料を買ってきてもらったり、献立を考えて実際に一緒に作ることができます。その時に大切なのは

・一緒にやり方を教えてあげる
・必ずありがとうと言う
・失敗をせめず、次回も期待を伝える

日常的に自己効力感を向上させる習慣がある。それは、自己防衛の砦を持っていることに等しいです。それにお手伝いは生活力、やり抜く力、段取り力も身につきます。お得!

運動させる

・子供が楽しく出来る。
・仲間がいる。
・広々とした場所で行う。

こういった条件を満たせると良いんじゃないかな。運動は万能薬ってくらいに認知・非認知能力を高めます。つまりメタ認知や運動能力、集中力、そしてレジリエンスなど。

さらにストレス解消や筋力向上、血液循環を良くし免疫力も上がるなどメリットだらけ。お得すぎます。

日記をつける

可能なら内観しながら日記をつけること。すると周りに支えられているという実感がわき感謝傾向も高まります。それに、自分の今の状態を確認することができます。

自分に起こったことや生まれた感情、まわりで起こっていることを書いていくうちに冷静に物事をみる力がつきます。

参考文献
『子どものレジリエンス ―プレイセラピィの過程から―』人間生活文化研究 Int J Hum Cult Stud. No. 25 2015
『子どものレジリエンスを育てるための「心・技・体」による包括モデルの実践』静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会・自然科学篇 = Bulletin of the Faculty of Education,Shizuoka University. 静岡大学教育学部 編 (67), 89-103, 2016
『自己愛が強い子どもを育む : 虐待・非行の体験から得た教訓 (特集 子どものレジリエンス)』児童心理 68(11), 965-969, 2014-08
『スポーツの中で育てる「レジリエンス」 (特集 レジリエントな子を育てる)
児童心理 70(1), 95-99, 2016-01
『折れない心しなやかな心をつくるレジリエンス』小玉正博監修/合同出版/2019